「つくり方からつくる」って、 どういうこと? と思ったあなたに、 ひとつずつ説明します。
どういうこと?みてみる
現場は朝、ゲートが開きその日に使う部材が搬入される。そこから段取りと仕込みをしてやっとメインのクレーンが動き出す。というのが常識だった頃、次の日の朝一の部材は夕方までに入れて仕込んで終了という形を作った。それによりメインのクレーンが朝すぐに動き出し稼働率が10%以上増えた。
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生産性を上げるために、地上で複数の部材をサブのクレーンで組み合わせ、一度に吊り上げるという方法がある。ただしこれは多くの作業員が立体的に手順を把握しなければならない上、リスクも多かった。そこで作業員への周知、馬(台座)の準備、事前の重心検討、関係者への根回しなどを駆使し、大量部材のユニット化を始めた。
一度の荷揚げで闇雲にたくさんの部材を吊り上げると、ワイヤーが絡まったり引っ掛かったりして却って時間がかかってしまう。 そこでワイヤーの長さや太さを変え、連吊り用のワイヤーや天秤(棒状の物を途中に挟みそこからすだれ状にワイヤーを垂らす)を作った。今や天秤は製品化され一般的に使用されている。
合番図(プラモデルの設計図のようなもの)は鉄骨工場側の担当者が持ち、それに従い鳶が動くのが一般的であった。しかし事前に合番図をもらい最善の手順や地組計画を立て、仮設材の仕込み(次段階の作業)などを落とし込んだ自前の合番図を作成した。その結果、指示待ちではなく、率先して動くことが可能になった。
鉄骨工場側の都合でトラックに積み合わされていた部材を、現場での荷降ろしと取り付け順序に沿って向きや積み合わせを変えさせた。現場都合にするとトラックの台数が増えたり余計な手間ができたりして鉄骨工場は嫌がるが、折衝と根回しで実現させた。今や現場都合が一般的になっている。
搬入された部材をサブのクレーンで荷降ろしし、順番通りに並べ、ボルトなどを仕込み取り付けできる状態にしてからメインのクレーンで吊り上げていく。その一連の流れの中で、トラックの荷降ろしを素早くできるよう部材の下に細い鋼材を入れ、一度に複数材を降ろせるようにした。また、それまで建方作業では使われていなかったフォークリフトを導入した。
建設機械を据え付ける場合、多くは本来あるべき本設の梁を一部、後まわしにしなければならない(その梁を「ダメ梁」という)。建物が概ね出来上がり、建設機械を撤去した後、ダメになっている梁を各階に取り付けていくのだが、長く開いた縦穴に改めて梁を落とし込んでいくのは危険と手間が多分にある。事前にダメ梁を近傍に仮置きすることでそれらを省いた。
それまで「機械を扱う指導員」、「元請の職員」、「鳶会社の番頭」にて行われていた計画や検討会に全員で積極的に参加し、効率的な手順の提案もした。その後、実施工まで責任を持って遂行することで大幅な工期とコストの削減に成功。今や弊社の施工実績が基本工程になっている機械も多数ある。
タワークレーンには数百本の大型ボルトナット(3~4kg)が使われている。ボルト1本に対しナット2個が1セットとして組まれた状態で納入されるが、高所でボルトをほぐすのは落下の危険度も増すため予め地上でボルトナットをほぐし、別々の袋に入れるようにした。このやり方は今や一般的な手法となっている。
仮設エレベーターの囲いには、出元の異なる数種類の仮設材を組み合わせて使うことになる。それぞれの自社便で現場に搬入すると、バラバラの資材をその場で捌き、運搬や荷揚げしなければならなかった。そこで1フロアあたりに使う材料を細かく洗い出し、ひとつにまとめて搬入してもらうよう運送業者の方に依頼した。
インパクトドライバー、インパクトレンチ、ハンマードリル、レーザーレベルなどをいち早く備え、積極的に作業員に使用させた。今やインパクトドライバーは鳶工の一般的装備品となっている。
仮設材に一括して墨出しをして、いちいちスケールを出す手間や高所でスケールやペンを落とすリスクを無くした。また、水平や鉛直を見たり確認したりするのは測量屋の仕事であったが、足場など仮設物に関しては鳶工でもレベルを使用できるように実践した。
足場のユニット工法(複数マスを組み立てておきクレーンで積み重ねる)は存在していたが、全体図面を見ながら行き当たりばったりで行うのが一般的であった。そこで事前に図面をブロック割して、使用材と仕込み材を記入した施工図を作成。作業員に周知することで生産性が向上。さらにクレーンの1日の出来高を正確に算出し、仮設材の過不足を無くした。
メンバーが固定されてくると他現場の同僚と会う機会が減り、現場ごとで作業の質や安全に対する意識に差が出ることもある。そこで従業員同士が2か月に1度、安全大会を開催。今では一般的になっている「危険予知訓練」などを取り入れ従業員の意識向上に取り組んでいる。また現場管理者である職長は月に2度のミーティングを実施。自分の担当現場と会社全体の2つの視点で物事を整理できるようにした。
24時間体制の現場は大抵の場合、8時~17時と20時~5時の2部体制になっている。スムーズな引き継ぎと空白時間の無駄を解消するために13時~22時という枠を設けた。現場の状況、道路使用許可の状況などにより柔軟に作業時間を変更することで、より効率的に働きやすい環境を整えている。
親睦会費を集め、年に2度、統一の作業着や防寒着を配布。弊社所属の従業員として一体感や矜持が生まれた。今や多くの会社が同様にしている。